はじめに ――70歳になってみる夢――
私は終戦の翌年(昭和21年)疎開先の茨城県で中学校に入学した。物なし時代のその時期に図書室できれいなベージュ色のフランス装丁の本を見つけた。
それはアンドレ・ジッドの『狭き門』だった。
小学生時代は、山本有三の『路傍の石』などしか読んでなかった私は、『小説は人生の教訓』と思っていただけにこの瑞々しい恋愛感情に魅せられ、ヒロインのアリサにすっかり夢中になり女性の気持ちを察せられず、互いに愛し合いながらも結ばれずに終わらせてしまうジェロームに苛立ち、――これが作者の企みなのだが――(彼のように女性のデリカシーが理解できない男性にはなりたくない)と思う一方、すっかり小説の魅力の虜になった。以後、小説を読み続けてきた。
大学を選択する時、文学など道楽的な仕事につけるほど我が家が裕福であったら、工学部などは選ばなず、迷わず文学部を選んだと思う。――そうしたら今頃は……――。
が、そんな余裕もなく食いはぐれのない工学部を選択したわけだが、文学は仕事を卒業したらぜひ取り組んでみたいテーマだった。 素人のへたくそな作品は、最後まで読むのは骨が折れる。
だから、最後まで読んでいただけたらそれだけで満足だ。
ましてや、いいにしろ悪いにしろ一言でも評を言っていただければ、これ以上の喜びはない。
以上
2005年10月2日
椎名 利
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