cantabile

 ニューヨークにいる娘は、メットファンなのだが、彼女からこんなメールがきた。

 『そういえば、フジテレビ(だと思う)の月曜日9時から「のだめカンタービレ」っていうドラマを今やっていて、すごい人気なのだけれど知っている?もともとは漫画本のものをドラマにしているのだけれど、音楽学校が舞台なので色々なクラシックの曲が番組内ででてくるよ。くだらないけど、コンサートマスターの役割ってそういうものなんだと思ったりした。漫画のほうが面白いと思うけどね(漫画は結構まともな人からも評判がよい)。この番組のテーマソングがベートーベンの7番なのだけど、この番組人気でいまや携帯の着メロのダウンロード人気No.1は7番なんだってさ。一度ちょっと見てみたら』

 早速番組を見てみたら、番組のテーマ音楽が『ベートーベンの七番』、終わりが『ラプソディー・イン・ブルー』というわけで、中では『ラフマニノフのP協二番』『モーツアルトのオーボエ協奏曲』『ブラームスの一番』といった、なかなかの盛りだくさんのメニューだった。

 ストーリーは、指揮者の千秋(玉木宏)を慕うのだめ(上野樹里)との恋愛関係を中心に展開される、他愛もないものだが、どんな音楽がかかっているのかとの興味に惹かれて見ていると面白い。

 もっとも『ブラームスの一番』を指揮する千秋を見ていたら、俺の得意なレバートリーなので俺の方が巧いと思ったりしているわけだけど……。

 そのような関心の元で、最近HMVに行ったら、正面の一番めだつ場所に、『のだめカンタービレ』のCDが棚一杯に陳列してあった。

 どんな曲目が入っているのかとジャケットを見るとベートーベンの『七番の第一楽章、第四楽章』……などが入っており、指揮者はと見ると『梅田俊明』となっていた。

 俺は鮮やかにある場面を思いだした。

 あれは、武蔵小杉の社宅に居たときだから、多分、昭和四十年代前半だと思う。

 梅田君が家族でやってきて酒を飲んだことがあった。その時の男の子が俊明君だが――多分六、七歳だとおもう――親達にそくされて『星影のワルツ』を歌った。すばらしい音程のしっかりした歌い方で、とても幼い子供が歌っているとは思えなかったのを、今でも鮮明に思い出すことが出来る。

 『音痴な親父からでも、音感がいい子が生まれるのか』と思ったが、我が家は全て音痴。

 とすると、奥さんからの遺伝だろうか?
                               


2006年12月8日
                                  椎名 利

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