僕の小説修行も十数年を迎え、およそ三十作を超えた。

   ちなみにジャンル別に分類してみると次のようだった。

   @青春小説 A恋愛小説 B歴史小説 C伝記小説 Dパロディー

   今、僕が属している小説教室は十数人で、内半数ぐらいは常連メンバーだが他は流動的で出入りが激しい。

   新しく入ってくる人の動機を探ってみると、自分のことを書きたいというインセンテブの人が多い。

   初めに自分の周辺から始まるのは当然だが、これだけだと二三の作品を書くと終わってしまう。なぜなら、そんなに波乱万丈の人生を送った人は少ないからだ。

   従って、他にテーマを見つける方法を持たないと長く続かない。

   自分の興味を持った歴史上の事件、人物を対象にするのも一方法だ。

   これは調べれば書けることだから。

   名が通った作家でも、長年書いていると歴史物や伝記を書いているのはこのためだろう。

   僕は、なるべく自分が現れるのを避けたいと思っている。裸にされるようで恥ずかしいからだ。と言って、普通の作品で全く現れないようにすることはとても難しい。

   それが可能なのは歴史ものやパロディーだろう。

   この『信長の夢』は、2006年にポルトガルに旅行した時、リスボンからほど近いイエズス会の本拠地エヴォラ大聖堂を訪れ、そこで、わずか十五、六歳の少年使節が弾き絶賛されたと言われたパイプオルガンを見たことだった。

   逆光に浮かび上がったパイプオルガンは神々しかった。

   さらに、正使の一人、千々岩ミゲルが帰国後棄教した事実を知った時、この天正少年使節団に興味を覚え、戦国時代になぜとの疑問にとらわれた。

   スペイン人神父の棄教をテーマにした作品に、遠藤周作の名作『沈黙』がある。

   死んでも自分の信念を通すような人間に僕は興味がない。死をかけて守り通す信念などあるとは思えないからだ。

   むしろ、棄教する人間にこそ共感を抱くのは僕だけだろうか?

   PS:次はまた『少しHな知的な小説』にするね。だから、今回は我慢して読んで。俺、まとものものも書けるという証拠を示したいのだから。

                             


2010年3月11日
                                  椎名 利

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